【自由大学講義】 幻想のインターネットミュージック
音楽プロデューサー 牧村憲一× IT・音楽ジャーナリスト津田大介
http://www.freedom-univ.com/lecture/detail88.html
あまりにおもしろそうすぎなメンツによる講義なので
たまらず行ってきた。
そして非常に感銘というか、なんというか
もう、いろんな気持ちが、もう、湧いて
非常にテンションが上がる場でした。
以下、おおまかですが講義内容まとめです。
※自分メモ+細かい単語はググッて補正して掲載。
内容自体は音楽について中心ですが
個人的には音楽以外含めた頭で聞いてました。
●音楽配信の歴史
1996~ 着メロの誕生
1999 iモードの登場・端末の高機能化
SONYによるbitmusic~atrac3による音楽配信
メモリースティックウォークマン~ネットワークウォークマン(2000)
※iPodより先んじて、同様のコンセプトのウォークマンをSonyが発売していた
[世界]Napsterの登場2000 インターネットバブルに同期した各社音楽配信への参入
2001 [世界]iPod / itunes 登場
2002 着うた…元々Sony関係者のアイデアだった。
発想の背景としては、従来の着メロビジネスは
JASRAC経由でアーティストへの利益還元はされるものの
音源そのものを取り扱っている音楽出版事業者には
利益になるモデルではなかったことがある。「着うた」は、ケータイユーザーが
「1曲数百円であれば小額決済として
気にせず買ってくれることを背景に成長。2004 音楽配信サービスmora登場
従来、各レーベルごとに別々だった音楽配信サービスを「網羅」する形で登場。2005 itunes store Japan
247music(ex.Sony 丸山氏)2006 MySpace Japan
2007 Natalie
2008 着うたフル プラス登場
●音楽業界にあったIT・通信系の配信事業に対する嫌悪感とは
CD販売中心の市場において、音楽業界から見てインターネット配信は
自分たちの権力を奪っていくものという意識が存在した
カラオケなどと同種~といった音楽業界側の意識として「壁」が存在した
Todd Rundgren 等
信頼できるアーティスト/ミュージシャンのインターネット販売参入が
新しい印象を与えるも、以前としてCDを中心とした流通から大勢は動かず
サービスとしての成功例もまだなかった。
インターネット配信は
CD流通を軸とした「既得権益」を阻害する要因として見られていた。
伝統的に、音楽業界は常に
「既得権益を侵す者への拒否反応」を示してきた。
ex.
90年代 渋谷系の流行~HMV・Tower Record・Virgin・WAVE等メガストアの参入
当初は、メガストアへのアピール・待遇などをよくすると営業から嫌われた。
(既存の流通ルート(各地域のレコード小売店等)の権益が奪われるから)
いまではCDショップでおなじみの試聴器も
Virgin Mega Storeに初設置の際には批判の声があがった。
(「ユーザーに店頭で試聴されたらCD買わなくなる!」という考えのため。)
●複製技術(システム)が変わると、音楽が変わる
1877 エジソン レコードの発明(=音楽複製技術の誕生)
1925 ラジオ放送開始
1964 Moog(シンセサイザー)
1980~コンパクトディスク(CD)
2000 音楽のファイル化
メディア様態・入れ物が変わること
=音楽そのものの変化
として繰り返されてきた。
◇1980 コンパクトディスクの登場が意味するもの
Skip/Back/Stop/Edit の概念が誕生する萌芽2000年頃のmp3等による音楽のファイル化がはじまる前の段階で、
その地盤は1980年頃、CD登場時点で構築されていったものである。
The Beatles「Sergent Pepper's Lonely Hearts Club Band」
→コンセプトアルバムとしての意味が成立していた
A面 / B面 → 1枚の盤の中にストーリー性を定着構築できた。
CD=Skip/Backで好きなところから再生できる=ストーリーは壊れる
ジャケット・パッケージ含め原価250円のCD=3,000円で販売
音楽業界が長い間秘密としてきたCDを中心とした流通構造
→1曲ずつでの配信=CDベースでの課金ロジックの崩壊
●技術が変わると、音楽が変わる
1956 チャックベリー:エレキギターの定着
1967 ビートルズ「Segent Pepper's~」:多重録音
1973 クラフトワーク:電子音楽
1979 YMO:テクノ
1989 フリッパーズギター~渋谷系
●フリッパーズギターについて
フリッパーズギター:渋谷を中心に6万枚(最終的に25万枚~)
ユーミン:全国区で200万枚
6:200でなお、現在にいたる評価を与えられる理由は…
◇フリッパーズギターの音楽の特徴とは…
・90年代~オリジナルな音楽の飽和状態
・DJ文化の存在/引用という方法
・サンプリング技術
AKAI S612~低価格になったサンプラー→HIPHOPでの人気→POPS領域への浸透2000年代を予見するスタイルがあったのでは。
—
ヘッド博士の世界塔=91年頃
サンプリングに対して対価を払う習慣はまだ存在しなかった。
サンプリングの対価発生はサンプリングの利用が浸透した
93~94年頃から。
●2000年代に置ける「ライブ」の価値
・CD =↓売上低下(6,000億円→3,000億円)
・配信 =→2008年で横ばいに
・ライブ =↑上下動ありつつも向上を続けている
ロックフェスティバルの開始(98・99~)
全国各地でのライブハウス増加
□80年代バブル期
ライブ活動にレコード会社から援助/スポンサー付ライブ□90年代序盤
バブル崩壊~□90年代後半
ロックフェスティバルの登場
●ソニーのもうけ方
<牧村>
・プレス工場
・営業
・原版権
+
<津田>
・CDプレイヤー
・CD特許パテント
atrac3で配信メディアに対しても特許課金を画策=
特許課金への抵抗感=レーベルごと配信事業乱立期の背景
—
現在は、総合的なビジネス展開を見据えて
原版権等についてはシェアを図る動きも見える。
●表紙=雑誌を売る方法
イベントが雑誌を売る←→雑誌がイベントを知らせる
ex.ロックフェス特集
ex.ミュージックマガジン「フリッパーズギター特集」は増版出荷された
ex.全国ツアーをするクラスのバンド
・メジャーリリースCD売上=15,000枚
↓ ↓ ↓
・ライブ会場限定CD=30,000枚
流通 / 中取りを通さないため、利益率も高い。
モノの売り方の変化が発生~インターネットは音楽を救うか?
●インターネットと音楽
□従来の音楽業界4レイヤー
・メジャーメジャー :大手レコード会社アーティスト
・メジャーインディー :ex.坂本龍一 等
・インディーメジャー :インディー出身でのメジャークラス活動
・インディーインディー:インディー現場~手売り等
売るモノ自体の違いでレイヤーを分けることができた
↓
活動の「深さ」基準に変化
ex.supercell featuring 初音ミク 10万枚販売~ゴールドディスク獲得
ex.相対性理論
●初音ミクはシステムの変化?
・音楽業界で嫌われる初音ミク
初音ミク紹介~DTMソフトウェアとしては使いにくいインターフェイス
発音・音の長さを個別に設定する作業=全然デジタルじゃない
・音楽としては非常にストレートなのに
ストレートとして扱われない相対性理論
(アーティストサイドの戦略性含め)
スタジオボイスではじめて特集が成立→SV休刊
牧村「間に合ってよかった」(会場爆笑)
—
●初音ミク普及の特異性
Vocaloidは80年代からヤマハが開発を続けた技術
音楽業界的には「仮歌で使えれば」という認識
・DTMソフトとしては使いにくい
↓CGMベースでのノウハウ蓄積~共有
・プロより素人の方が早く順応/適応
極めてインターネット的な利用層形成
プロがバカにしてアマチュアが支持するものがメジャーになっていく
そういう現象そのものは常に音楽業界において
繰り返されてきた。
●ニコニコ動画
コメントすること=イベント参加の感覚
支持表明としてのF5アタック
●インターネットが音楽を純粋にする?
インターネットを通じた音楽活動=中抜き構造の省略?
媒介となるミドルマンには2種類ある
・良きパイプ
・悪しきパイプ
ミドルマンが「音楽流通の仕方の最適」を
インターネットに対して指導できるか?
<MySpaceで人気になれるか?>
たむらぱん
=インディーアーティストとしてそもそも有力
その上で、MySpaceがカラを破るツールとして機能した。
(数多くのコメントに対して丁寧なレスポンス等)
ネットの活用はあくまでひとつの「方法」でしかない。
「モノ(盤)を出すこと=価値として認知される」影響力は依然として強い
●レコード会社が集めたノウハウの有用性
・いい音楽のつくり方
・ファンにアーティストを理解させる方法丸山茂雄氏「ストーリーづくり」への言及@ひろゆきとの対談
レコード会社が持つノウハウには
現在でもなお有用性の高いものが多くある。
□フリッパーズの場合
閉鎖的/封鎖的として御する→ステータスの成立
□初音ミク→音楽としてピュア?
□あのねのね→デビュー時の売り出し「吉田拓郎よりおもろい」
↓
日本の音楽シーン=キャラクターが支えてきた!
●ノンスタンダード
YMO散会後、「テクノは終わった」風潮の中
細野晴臣のレーベルとして登場。
(同時期に坂本龍一:MIDI / 高橋幸弘:テント・レーベル)
ビジネスとしては失敗
牧村「以後2年くらい記憶がない」
その頃のノンスタンダードの空気と
現在の初音ミク周辺の空気には
かぶるものを感じる
(ちょっとこのあたりあいまいですすいません…参加された方、どなたか補正してくれると)
●インターネット時代に合わせたストーリーづくり
・初音ミク
・相対性理論
それぞれがストーリーを持っている
インターネットを前にして
いかに能動性を発揮して展開できるか?がカギ